またの冬が始まるよ


恋しい想いは あなたへだけ…



互いの身を抱きしめることで感じ合うだけでは飽き足らず、
もどかしげにシャツを取り去り、素肌と素肌を重ね合う。
肌という境目があることさえ焦れったいが、
そこはさすがにしょうがないこと。
二人という別々の個であるからこそ向き合うことが出来るのだし、
歯痒くもどかしいと思うなら、その愛おしさを思う存分伝え合えばいいだけのこと。

 「あ…。///////」

何でかな、何でだろ。
イエスの指や唇でそおと触れられているところが、
悪戯っぽく接吻を降らされているところが、
何とも言えぬ悦をおびるのは判るけど。
そこからどうつながっているものなのか、
体の奥のほう、
下腹の奥にもじわじわと熱が集まっており。
そこから下肢が蕩けそうなほどの熱が、
逃れることの出来ぬまま、
じゅんじゅんと溜まってゆくのが不思議でならぬ。
いや、理屈としては判っているのだけれど、自分の身の上に起こるとやはり、
そんなにも私って淫蕩なんだろうかとか、
そんな私だと判ったら、イエスは愛想を尽かさぬだろうかとか、
余計な羞恥までもが沸き立って、
気真面目で誠実な釈迦牟尼様、自身で自身を虐げてしまわれるから困ったもの。
そればかりか、

 イエスって、実はこういう形でも情愛を施しているのかなぁ?

そういう存在だから? だとしたら義務みたいでちょっと切ないかも。
そんな見当違いな想いまで、何処からか潜り込んだりしたのだけれど。
でも、そんなかすかな杞憂もあっという間に、
どんどん煮えてゆく下肢の奥の坩堝に飲まれ、
肌の下が一様に、炙られているかのような熱でおおわれてゆく。

 “あ、なんか恥ずかしいよぉ…///////”

拍動を刻むようなじんじんとした熱の向こう、
自身のいきり立ちがぼんやりと判って、
何ともはしたないなという羞恥が頭をもたげたが、

 「…んっ。」

そういったじわじわと積み重ねられた熱を一気に凌駕してしまったほどの、
くっきりした触感と、そこから生じた強い何かに自制をあっさり弾かれかかり。
慌てて息を詰めて声を押さえたブッダ様。
噛みつかれたわけじゃあないし、痛いほど摘ままれたとかしたわけでもない。
女性なら胸乳にあたろうところのささやかな肉芽へ、
ちろんと舌先で触れられただけ。
だというのに、どうしてだか
大層過敏な反応が、背条を走り抜けて四肢へと突き抜け、
そのまま総身を縮めたくなるほどの
こらえるのがぎりぎりな 強烈な感覚に襲われる。

 「ここはまだダメ?」

イエスの囁く声が、他所へは聞こえないよう低められている分、
耳元からすべり込んだ体内をいい響きで震わせるようで。

 「あ…っ、んくぅ。//////」

何でだろ、今日はなんか変だ。声にまでこんなに感じてしまうなんて。ああでも、

 「あ、あのね? ダメ、じゃない。」

痛いなら辛いなら辞めとこうねと、
イエスはいつもそうやって、
臆病な初心者を気遣うよう、こんな時まで心を砕いてくれるのだけれど。

 「も、ちょっとなら、いい、平気。」

片言みたいな言いようじゃあ、信憑性ないかなぁ。
でもね、半分は本当。
掠めた舌のせいでぬるりとなったところを、
指の腹でやっぱり掠めるように撫ぜられるのが、
何でかな、我慢するのはきついけど、
諦められちゃうのはそれはそれで焦れったいと思えてきたから、あのね?
ゆっくりじんわり高められる悦じゃあない、
一瞬でかぁっと沸点まで跳ね上がるような刺激らしいのへ、
ちょっとだけ身をゆだねてもいかなと思えた。

 だって、今更じゃないか

これは快楽しか生まれぬ交わり、
淫らだとかふしだらだとか、そういう禁忌なのは重々承知だ。
そも、ただ一人を特別に愛してはならぬという、最大の禁を侵している身、
目の前にいて、私をぎゅうと力いっぱい抱きしめてくれる彼との、
愛しい人との真摯な睦み合いを深めることに
今更、何を恐れるというのかと、
今宵はちょっとだけ妙なスイッチが入ってしまった釈迦牟尼様であったらしく。
迷うような沈黙からさえ、まだ無理だねと納得し、
あっさり諦めてしまうやさしいイエスへ。
大丈夫だから、でもあのあの、

 「…やさしく、してね?」

最後の方は消え入るような声になった、それは健気な“お願い”へ。
今度はイエスの胸がどきりと震えて、背条を甘い熱が駆け巡る。

 ああ、キミってば今なんて言いましたか
 やさしくってそんな、言われずとも心得てますけど、
 そんなに私って野性味あふれてておっかないですか?
 大胆不敵で、うっかりしていたら置いてかれそうとか思ったの?
 そんな切なそうな熱っぽい目で見上げられたら、
 何でもなかったはずの手も、震えてしまいそうになるじゃないの、と

それだけの文言が、ほんの一瞬の間に駆けて来て駆け去って。
ずんと立派に浮足立っていながらも、
それではブッダを怯ませてしまうからと、
そおと口許を寄せ、愛らしい肉芽へ舌先でちろんと触れる。
途端に跳ね上がりかかった麗しの肢体だったが、何とか動じないままで通し。
自分の指先へもちろりと舌先を押し付け、
唾液を移すと、もう片方の芽をその指の腹で押しつぶす。

 「んっ、やあ…ぁん。///////」

つい洩れてしまった か細い声に、誰よりもブッダ本人がぎょっとしたようで。
口許が覚束ない表情のまま震えたの、たまらずイエスが自分の唇で塞いでしまう。
触れて撫ぜるだけのようなキスをして、

 怖かった? もう辞める?

目顔でそうと訊いてみると、ううんとかぶりを振ったブッダで。
そのままか細い吐息をつくと、

 大丈夫、と

掠れた吐息と舌の弾む気配だけという密やかさで囁き返して来たのが、
ごめんね、何とも色っぽかったので、ゾクッてしちゃったと。
息を飲みつつ懺悔してから、

 「じゃあ、そっとね。」

それほど器用じゃあないイエスだが、
緊張からか それとも感じたからか、堅くなってきゅうと立ち上がっている小さな肉芽を
舌の先でするりと触れて、ほうと息を吹きかければ、

 「ぁ…。///////」

ふるると総身が震えたものの、シーツをぎゅうと掴み締め、
唇も食いしばって何とか声だけは出さぬよに、
強い刺激をやり過ごす。いや、

 “やり過ごすなんて、出来ないよぉ。/////////”

そこから注ぎ込まれるのは、ずっと熱くて激しい悦の熱。
胸の双方から肌を伝って血脈にもぐり込み、
四肢の血肉を甘く甘く蕩けさせ、体の奥へも容赦なくどんどん運ばれてゆくばかりで。

 「あっ、(ああ、あう…。///////)」

何とか手を顔まで持ち上げ、自分で甲を甘噛みし、
声を押さえて見せたため、

 「もうダメ?」

これは、別のが もう至るのかと訊いてきたイエスで。
こういう時に露骨にならないのは何でだろ。
こういう時に誠心誠意であたれるように、日頃がずぼらなんだろかと、
こんなときだのに何故だかそんな思いがちらとよぎったものの、

 「あ…。///////」

こくんと頷くつもりが
ひぐぅと喉奥が逆巻きかかり、窒息しそうな悲鳴を上げかかったの。
いかんいかんと焦りながら、イエスが長い腕にてくるみ込むよに抱きすくめ。
含羞みに赤らむお顔にキスを降らせると、
下肢へそおと伸ばした手で触れて、
我慢の限界にあった愛しの伴侶様を昇らせて差し上げたのだった。




     ◆◆◆



あまり急いで呼吸をすると酸素の取りすぎで苦しくなると判ってはいるが、
それでも息の出入りの音が耳元でうるさいほどの激しい呼吸はなかなか収まらず、
鼓動がそのまま胸板を内から叩いているかのように、胸が締め付けられて苦しい。
毎朝のジョギングで多少なりとも体を整えているはずが、
こうまで辛くなるほどの睦みとなったのは、恐らく初めてではなかろうか。
そのくらい急速に至ったのだなと思ったと同時、
日頃はイエスがどれほど気を遣い、
性急にならず、やさしく抱いてくれていたのかを思い知る。
一気に至ったそのまま、頽れるように弛緩した身は思うように動かせず、
まだ腕がほどかれないままでいて、くっついている肌と肌が随分と熱を帯びている。
酸欠に近い状態から、何とか胸は落ち着いたけれど、
今度は久々の級の疲弊から、ただただぼんやりしていたブッダの髪を、
指の長い手が、そおと梳いて掻き上げてくれて。

 「大丈夫? 胸とか苦しくない?」

こちらの額の隅に唇を当てて、
そのままで囁きかけてくるイエスなのへ、
ううんとかぶりを振ると今一度、深い吐息を一つつく。

 「イエスこそびっくりしたんじゃないの?」
 「う〜ん、そうだね。」

しっとりと指通りの良いブッダの髪をするすると梳きながら、
どうとも取れそうな返事をし、

 「私だって何をしても初めての体験だもの、
  ブッダが大変だ〜ってだけで大きに慌てるし、
  そのくせ……。」

何か言いかけて、なのにそのまま何も続かぬのへ、
???と気だるげに視線を向ければ。
潤みをました双眸に見つめられたのが責められているよに思えたか、

 「だから、あのその。
  苦しそうにしていたブッダだったのに、
  悩ましげに眉が寄ってたお顔とか くうぅってこらえてた声とかが、
  すごく色っぽいなぁってドキドキしちゃったし。///////」

 「ううう…。/////」

男の性だ、しょうがないと、そこへも理解は及ぶけど。
そうまでの悦に悶えてしまったという対象が、
他でもない この自分の、苦悶に耐えてたお顔だと言われては、
何とも複雑な心境になるというもので。

 「…で?」
 「え?」

それは色っぽいお顔にドキドキしちゃったと、
ちょっぴり不本意なところへ萌えたなんて口にしたイエスなのへ、
だったら…とその先をもっと訊いているブッダであったようで。

 「いやあの、ほら、キミ疲れてるだろうし…って。あれ?」

このままゆっくり寝落ちしなさいと、
誤魔化しかかるイエスだったが、そこはそうはいかぬということか。
すっかりと萎えてしまっていたはずの手が、がっしとイエスの肩へと置かれ、
どういう武道の応用か、難なく寝姿勢を入れ替えられて。

 「そうまでドキドキしたのなら、
  キミももう解放を待つばかりってことなんでしょう?」

 「何でそうもはきはき言うのぉ〜。///////」

色香がないとは言わない。
ちょっぴり熱っぽい声音は甘く掠れて艶っぽく。
やはり熱に潤んだ眼差しも、
先ほど至った瞬間を引きずってか、甘くて煽情的な香りもし。
何より、全身から匂い立つような妖冶な雰囲気が感じられ、
なのに、見つめてくるお顔は愛する釈迦牟尼様のそれと来て。
胸元をとんと押さえられただけで、手際よく布団の上へと縫い留められたまま、
今度は自分がやさしく抑え込まれる格好となり。
ありゃまあと翻弄されるままのイエスだが、

 “ま・いっか。////////”

下肢がつらいのも事実だし、
いつも優しく、
こちらのささやかな誇りのようなもの、
潰さぬよう運んでくれるブッダだし、と。
それこそ ささやかな虚栄心もとっとと放り出してしまい、
それでもお顔を見られるのだけは恥ずかしいからと、
愛しいお人を懐に掻きい抱き、
なされるままになる番なの、粛々と受け入れたヨシュア様だったのだった。



   〜Fine〜  15.11.15.


 *唐突な終わりようですいません。
  時間が足りぬ、色香も足りぬ、うう…。
  後日談というか、朝チュン(で合ってるのかな?)というか、
  書くと思いますので、
  もうちょっと待っててね?


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